JIADSの歩み

二人の医師の出会いが潮流を生む

大阪大学の医局を出て郷里で開業した小野善弘は、年数を重ねるにつれ自らの臨床の結果に大きな疑問を感じ、診療所を弟に譲り渡米しました。Dr.Nevinsの門を叩いた小野は、科学的な背景をもった臨床を目の当たりにし、歯周病学ならびに歯周治療と密に関連した補綴治療の実際をDr.Nevinsの下で学び直したのです。帰国した小野は、理想的な診療を日本で始めるために、優れた補綴臨床家をパートナーとしてグループプラクティスを行う必要性を痛感していました。
大阪大学の補綴学教室で咬合に関する仕事をしつつ臨床結果にこだわりを持ち続けていた中村公雄は、特に補綴物に永続性を持たせる上での歯周治療の重要性を認識しつつも大学での臨床に限界を感じていました。

この二人の出会いは、グループプラクティスを可能にするばかりではなく、互いに知的な刺激と臨床家としての熱意を交換しあうものでした。昭和59年、二人は大阪にO-N Dental Clinic(現・医療法人貴和会歯科診療所)を共同開業し、科学的な根拠を持った予防性の高い診療を行う試みがスタートしました。同時に二人を軸にした勉強会(O-N Study Club)を持ち、理解者の輪を広げました。

IADSから学びJIADSヘ

そして彼らが日々確信を深めつつある臨床の考え方とテクニックを広めるため、小野の大阪大学医局時代の先輩である藤原顕のリーダーシップを得て、1988年、小野が学んだボストンのThe Institute for Advanced Dental Studies(IADS)との姉妹団体The Japan institute for Advanced Dental Studies(JIADS)を発足させたのです。同年6月第1期のぺリオ&補綴コースが、(株)ヨシダ大阪支店を借りて始まりました。ぺリオコースは、インディアナ大学歯学部で助教授として教鞭を執っていた船越栄次、ボストン大学大学院を卒業し大阪で開業する畠山善行、補綴は中村の大阪大学時代の医局員であった藤井康伯、森田和子らを講師に擁する他に類例をみない総合的なポストグラデュエート・コースとなりました。また、大阪大学で有床義歯講座の講師を長く務め総義歯臨床に豊かな経験を持つ藤原顕は、同大学の医局の後輩である森居研治と藤原歯科医院の歯科技工士である渡辺克美を講師に、総義歯コースを始めました。

よりよい歯科研修環境を整える

ぺリオ&補綴コースの第3期からは、貴和会歯科診療所に隣接する新大阪北ビルに専用の研修会場を開設、O-N Dental Clinicの歯科技工士長・重村宏らを講師とする技工コースも始まりました。常設コースばかりでなく、3年に1度ボストンで開催されるPRDシンポジウムには、日本からの受講生のための通訳をアレンジしたツアーと現地での特別研修会を開催しました。1991年からは研修生に対するアップ・トゥ・デイトな情報を提供するため1年3~4回のJIADS informationの刊行を始めました。また米国歯周病学会(AAP)総会に時期を合わせてGTR法セミナーやインプラント・イノベーション・セミナーを企画、ボストンのIADSからはDr.NevinsやDr.Reiserを招いて講演会を開催しました。

その後、それまでぺリオ補綴コースとして6ヶ月で行っていたコース内容を充実させるべく、ぺリオ6ヶ月コース、補綴6ヶ月コースとし、さらにエンドコース、インプラントコースを増設、また限局矯正コース、技工コース、インプラント技工コース、さらに衛生士コースを加え、総合研修コースとして歩んできました。

研修後もさらなる向上のために

そして、1994年 JIADS研修会を修了された先生方との連携を強くするため、JIADS CLUBを設置。JIADS創立5周年記念講演会とかねて、 JIADS CLUB設立記念講演会を開催(招聘講師 Dr. Nevins, Dr.Mellonig, Dr.Murphy)。また、この年より、クラブ会員の先生方にJIADS Information を発展させたThe Jounal of JIADS CLUBの発刊をはじめ最新情報の提供や、器具、機材の紹介、可能な限り安価での提供を開始致しました。

IADSから学ぶ

 米国IADSについて

米国・ボストンのIADSは、Dr.Nevinsが主宰するぺリオと補綴のスペシャリストのための研修機関であり、ぺリオと補綴はもちろんインプラントの臨床研究と教育において、全米のリーダーシップをとっています。

Dr.Nevinsが主宰するボストンのInstituteでは、ぺリオと補綴に関する話題は勿論、エンド、矯正をも含め臨床に直結する話題を取り上げ、毎月1日~3日コースが数回開かれています。講師陣はDr.Nevinsをはじめ、Dr.Mellonig、 Dr.Buser、Dr.Lekholm、Dr.Dawson、Dr.Laskin、Dr.Mahan、Dr.Mcleanなどが名を連ね、世界的な Instituteとして注目されています。

日本のJIADSは、ボストンの本部と密に連絡を保ち、講師陣の交流や種々の情報入手を行っていくと同時に、各コースへの参加や日本人向けの特別コースの設立なども計画しています。

1つ前のページに戻る